これまでの研究
柳川方言に関しては,個別の現象に着目した研究はなされてきましたが,その全体像を明らかにすることを目的とした研究はおこなわれてきませんでした。個別の現象に着目した研究には,尊敬表現の一部を対象とした藤原(1952),柳川方言と周辺方言との語彙の差を言語地図の形で示した高野・田中(1972),松永・上野(1973),鬼丸ほか(1975),サムサ「寒いこと!」,エッサ「怖いこと!」のような形容詞にサがついた形を記述した坂田(2004)などがあります。これらの研究のほか,柳川方言の母語話者の方が編んだ辞書である松石(1985),(1989)があります。筆者は,柳川方言の全体像を記述することを目的とした研究を進めています(松岡2021a, 2021b, to appear)。