愛媛県大洲方言(宮岡大)
1.概要
愛媛県の方言は、語彙・アクセント・文法現象などによって,大きく4区画に区分されます。それはすなわち,瀬戸内海島嶼方言・東中予方言・南予方言・渭南方言の4区画です(杉山1964)。2. これまでの研究
全般】 現在の大洲市長浜町櫛生の方言文法を記述する藤原(1973),文法事項の調査結果を言語地図にまとめる岸江ほか(編)(2008)があります。 【語彙】 語彙を記述している先行研究に堀(1886)があります。この他に,当該地域の市町村史誌に語彙が掲載されています(長浜町誌編纂会1975,広田村誌編集委員会1986,内子町誌編纂会1995,大洲市誌編纂会1996,中山町誌編纂委員会1996,五十崎町誌編纂委員会1998,肱川町誌編纂会2003,河辺村誌編纂会2005,双海町誌編さん委員会2005)。このデータベースは,大洲市誌編纂会(1996)に掲載されている語彙を中心に,調査・分析したものです。 【音韻論】 特に名詞アクセントに関する研究が多くあります。頭高一型アクセントであると分析するものと,無アクセント(平板一型・崩壊一型)であると分析するものがあります。前者は金田一(1940, 1977)・平山(1940)・生田(1951)・武智(1968),後者は山名(1956)・平山(1957)・清水(2010)が採用しています。どちらが妥当か,前者と後者は通時的に異なる段階かなど,一致した見解はありません。以上に加えて,文単位のプロソディを論じる,藤原(1952),山口(1996)があります。 【形態論】 動詞・形容詞・形容名詞・コピュラの形態論を記述する,宮岡(2022)があります。謝辞
大洲方言を教えてくださる皆さまに,心から御礼申し上げます。 本研究は,JSPS科研費19H01255, 21J21555の助成を受けています。参照文献
藤原与一(1952)「方言「文アクセント」の研究」寺川喜四男・金田一春彦・稲垣正幸(編)『国語アクセント論叢』519–539. 法政大学出版局.藤原与一(1973)『昭和日本語方言の記述 ―愛媛県喜多郡長浜町櫛生の方言―』三弥井書店.
双海町誌編さん委員会(2005)『双海町誌 改訂版』双海町.
肱川町誌編纂会(2003)『新編 肱川町誌』肱川町誌編纂会.
平山輝男(1940)「四国アクセントとその境界線」『音声学協会会報』64: 9–19.
平山輝男(1957)『日本語音調の研究』明治書院.
広田村誌編集委員会(1986)『広田村誌』広田村役場.
保内町誌編纂委員会(1999)『保内町誌』保内町.
堀悌三郎(1886)「伊豫大洲方言」『東京人類學會報告』1(6): 112–113.
五十崎町誌編纂委員会(1998)『五十崎町誌 改訂』五十崎町.
生田早苗(1951)「近畿アクセント圏辺境地区の諸アクセントについて」寺川喜四男・金田一春彦・稲垣正幸(編)『国語アクセント論叢』255–346. 法政大学出版局.
河辺村誌編纂会(2005)『河辺村誌 新刊』河辺村誌編纂会.
金田一春彦(1940)「国語アクセントの地方的分布」国語教育学会(編)『標準語と国語教育』59–100.
金田一春彦(1977)「アクセントの分布と変遷」柴田武(編)『岩波講座日本語11 方言』128–180. 岩波書店.
岸江信介・津田智史・坂東正康・岡部修典・越智彩乃・玉井紗也香(編)(2008)『大洲のことば』徳島大学国語学研究室.
宮岡大(2022)「愛媛県大洲方言」方言文法研究会(編)『全国方言文法辞典資料集(7)活用体系(5)』31–41. 方言文法研究会.
長浜町誌編纂会(1975)『長浜町誌』長浜町誌編纂会.
中山町誌編纂委員会(1996)『中山町 改訂版』中山町.
小田町(1985)『小田町誌』小田町.
大洲市誌編纂会(編)(1996)『大洲市誌 増補改訂 上』大洲市誌編纂会.
清水誠治(2010)「愛媛にみるアクセント分布の多様性」上野善道(編)『日本語研究の12章』429–443. 明治書院.
杉山正世(1964)「愛媛県の方言区画」日本方言研究会(編)『日本の方言区画』446–458. 東京堂出版.
武智正人(1968)「肱川流域の方言アクセントについて」『愛媛国文研究』18: 66–72.
内子町誌編纂会(1995)『新編内子町誌』内子町.
山口幸洋(1996)「愛媛県喜多郡方言の一型アクセント的特質」『人文論集』47(2): 57–103.
山名邦男(1956)「四国の音調」『国学院雑誌』57(2): 24–36.